序にかえて
勝本町漁業詩作成委員長
熊本平助
勝本漁民である私達が、久しく待望していた『勝本町漁業史』がようやく発刊のはこびとなりました。昭和五十三年に本史が企画され、その編集委員長に私が就任しました。しかし実際の作業は、中上史行先生をはじめ、横山順壱岐郷土館長を中心に、町内有志の方々のご努力とご協力を得て、長崎県下では初めての『漁業史』として、組合員の大きな期待の中でその作業は進められてきました。ここに漸く多年の宿願が達せられ、町民の皆様と共に喜びたいと思います。
現在に生きる私達として、先輩たちの漁具・漁法の改良努力の足跡をひもとき、その労苦をしのび知ることは大切なことです。また積み重ねられた尊い遺産の熟成が、今日の勝本の漁村文化であることを改めて認識し、さらにこれを未来へ伸びる指針とすることは重要であり、有意義なことと思います。特に突風にも似た最近の時代の移りかわりは、古きものを一度に洗い流し、伝統ある風習と個性豊かな漁民性まで失わしめる感さえあります。先輩の歩みを記録して残すことは、私達の当然の責務であると考えるのです。
願わくば、この『漁業史』が漁民の愛読書として親しまれ、現在に生きる者、また次代をになう若き人達への励ましとなり、郷土愛の湧き出ずる泉となり得ればと念じています。また広く町内外に勝本町を知る手引きとなり、理解を深めていただければ望外の幸せと思います。
本史は初めての試みで、きわめて難事業でありました。この編集に貴重な時間と、長期間に亘り人知れぬご苦労をいただきました編集委員の方々に対し、深甚なる敬意と感謝を表します。また貴重なる資料をご提供いただき、種々ご指導ご協力を賜りました町内外の方々に、衷心より厚くお礼を申し上げます。
最後に、私達はこの『勝本町漁業史』の発刊を契機として、先ず漁業協同組合の原点に立ちもどって、現在漁協に課せられた使命の重大性を再認識し、組合員一致団結して漁業の発展に寄与する決意を新たにしていることを誓いまして、ご挨拶といたします。
【壱岐の象徴・猿岩】
【全国の月讀神社、月讀宮の元宮】